医療保険はいらない?まず公的保障の範囲を確認しましょう
「医療保険はいらない」という意見を目にすることがあります。結論からいうと、必要かどうかは世帯の貯蓄額や働き方(会社員か自営業か)、家族構成によって変わり、一律に「不要」「必要」と言い切れるものではありません。まずは日本の公的保障がどこまでをカバーしているかを確認したうえで、足りない部分をどう考えるかという順番で見ていきます。
公的保障はどこまでカバーしているか
医療費や休業中の収入について、日本には次のような公的保障があります。
| 制度 | 内容 | 自己負担が残りやすい部分 |
|---|---|---|
| 高額療養費制度(出典:厚生労働省) | 1か月(月単位)の医療費の自己負担が所得区分ごとの上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。2026年8月診療分からは月額上限が引き上げられ、区分ウ(年収約370〜770万円)は85,800円+(総医療費-267,000円)×1%、あわせて年間上限(区分ウで53万円)が新設されました。直近12か月に3回以上上限に達した場合の4回目以降(多数回該当)は44,400円で、こちらは据え置きです。2026年7月診療分までは区分ウで80,100円+1%でした。 | 差額ベッド代、先進医療の技術料、食事療養費、保険適用外の治療費 |
| 傷病手当金(出典:全国健康保険協会) | 健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった場合、標準報酬日額のおおむね3分の2が、支給開始日から通算して1年6か月支給されます。 | 国民健康保険(自営業者・フリーランスなど)には原則として傷病手当金がありません。また支給額は満額の給与ではないため、収入は下がります |
高額療養費制度の上限額は、勤務先の健康保険組合や協会けんぽ、市区町村国保など加入先によって申請窓口や手続きが異なります。事前に「限度額適用認定証」を用意しておくと、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられる場合があります。
なお高額療養費制度は2027年8月にも所得区分をさらに細分化する方向で議論されており、今後の政令・告示によって内容が変わる可能性があります。数値は必ず厚生労働省の公表内容でご確認ください。
制度の詳しい仕組みは、以下の記事でも解説しています。
公的保障だけで足りない部分はどこか
上の表からわかるように、高額療養費制度は「保険診療の範囲内での自己負担」に上限を設ける制度です。次のような費用は対象外で、全額自己負担になります。
- 差額ベッド代(個室・少人数部屋を希望した場合)
- 先進医療にかかる技術料
- 入院中の食事療養費の一部
- 保険適用外の治療・薬剤
また、傷病手当金は会社員・公務員などが加入する健康保険の制度であり、自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には原則としてありません。 この差は、民間の医療保険や就業不能保険の必要性を考えるうえで重要な論点です。会社員であっても、傷病手当金は給与の全額ではなく標準報酬日額のおおむね3分の2である点は押さえておく必要があります。
民間保険を検討する際の考え方
医療保険を検討するかどうかは、次のような点を自分の家計に当てはめて考えると整理しやすくなります。
- 差額ベッド代や先進医療費に相当する額を、貯蓄でまかなえるか
- 働けない期間が続いた場合、生活費を何か月分の貯蓄で支えられるか
- 自営業・フリーランスで傷病手当金がない場合、収入減少にどう備えるか
- すでに勤務先の団体保険や共済に加入していないか(重複加入になっていないか)
貯蓄でカバーできる見込みが立つ場合は、無理に医療保険に加入する必要はないという考え方もできますし、貯蓄が少ない、または自営業で収入減少への備えが薄いと感じる場合は、民間保険で不足分を補うという選択肢が出てきます。どちらが正しいというものではなく、世帯ごとの状況次第です。
注意点・向いていない人
- 保険料は年齢・性別・健康状態・保障内容によって大きく異なるため、この記事では具体的な保険料には触れていません。実際の金額は見積もりで確認してください。
- 「掛け捨て型」か「貯蓄型(返戻金あり)」かによって保険料や解約時の扱いが変わります。仕組みを理解しないまま契約すると、想定と違う結果になることがあります。
- すでに十分な貯蓄があり、勤務先の保障も手厚い方は、無理に医療保険へ加入する必要性は低いといえます。
- 逆に、自営業・フリーランスで貯蓄が少ない方や、扶養家族が多く生活費の備えを重視したい方は、公的保障で足りない部分を具体的に洗い出しておく価値があります。
無料の保険相談サービスの多くは、相談者が保険に加入した際に保険会社から支払われる手数料によって運営が成り立っています。複数社の商品を比較したい場合には有用な仕組みですが、特定の商品を強く勧められた場合はその場で即決せず、一度持ち帰って検討することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 医療保険に入っていなくても、入院したら家計は大丈夫ですか?
高額療養費制度により医療費の自己負担には上限がありますが、差額ベッド代や先進医療費などは対象外です。貯蓄でこの部分をまかなえるかどうかが、加入を検討する一つの目安になります。
Q2. 会社員と自営業では、公的保障に違いがありますか?
はい。会社員・公務員は健康保険の傷病手当金を利用できますが、自営業者が加入する国民健康保険には原則としてありません。この違いは詳しくは自営業と会社員|保険の必要性の違いをFPが解説で解説しています。
Q3. 高額療養費の上限額を超えないよう、事前にできることはありますか?
加入している健康保険組合や協会けんぽ、市区町村国保の窓口で「限度額適用認定証」を発行してもらうと、医療機関の窓口での支払いを上限額までに抑えられる場合があります。手続き方法は加入先によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
Q4. 医療保険以外に、公的保障との関係で考えておくべき保険はありますか?
死亡保障については、遺族年金などの公的保障と照らし合わせて考える必要があります。生命保険は必要?公的保障との関係をFPが解説もあわせてご覧ください。
ミナト先生のまとめ
家計のご相談を受けていると、「医療保険は入っておいたほうがいいですよね」という前提でお話が始まることがよくあります。ただ、まず公的保障の内容を一緒に確認すると、想定より手厚い部分と、逆に見落とされがちな部分(差額ベッド代や自営業の傷病手当金の有無など)がはっきりしてきます。医療保険が「いる」「いらない」を先に決めるのではなく、公的保障で足りない部分を具体的に洗い出してから、貯蓄でまかなうか民間保険で備えるかを考える、という順番を意識してみてください。
保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。
制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公式情報でご確認ください。


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