自営業と会社員の保障の違いをFPが解説【2026年7月】

[PR]を含みます

「会社員から独立して自営業になったけれど、保険はこのままで大丈夫だろうか」「自営業は保障が薄いと聞くけれど、具体的に何が違うのか分からない」——そんな声を家計相談の中でよく聞きます。

自営業と会社員では、加入する公的な仕組みそのものが違います。まずこの違いを正しく理解することが、民間の保険を検討するかどうかを考える出発点になります。

結論:自営業は「傷病手当金」と「厚生年金の上乗せ」がない

結論から言うと、会社員には自営業にはない公的保障が主に2つあります。

  • 病気やケガで働けなくなったときの「傷病手当金」
  • 老後や万一のときに国民年金へ上乗せされる「厚生年金」(遺族厚生年金を含む)

この2つがないことが、自営業の方が民間保険を検討する際によく論点になる部分です。ただし「だから自営業は保険に入るべき」と一律には言えません。貯蓄の状況や家族構成によって、必要な備えは変わります。

会社員と自営業の公的保障の違い(比較表)

項目 会社員 自営業
医療保険 健康保険(協会けんぽ・組合健保) 国民健康保険
傷病手当金 あり(標準報酬日額のおおむね3分の2、通算1年6か月)※出典:全国健康保険協会 原則なし(一部の国民健康保険組合で独自給付がある場合あり)
年金の土台 国民年金+厚生年金(2階建て) 国民年金のみ(1階部分)
保険料の負担 厚生年金保険料は勤務先と折半 国民年金保険料は全額自己負担
遺族年金 遺族基礎年金+遺族厚生年金(受給要件を満たす場合)※出典:日本年金機構 遺族基礎年金のみ(子のある配偶者、または子が対象)
労災保険 あり(保険料は会社が全額負担) 原則対象外(業種によっては特別加入制度を利用できる場合あり)
雇用保険(失業給付など) あり 原則なし

高額療養費制度(1か月の医療費の自己負担に上限を設ける仕組み)は、健康保険・国民健康保険のどちらの加入者も共通して利用できます。この点は会社員・自営業で差がありません。

公的保障で足りない部分はどこか

表からわかるとおり、自営業の場合は次の2つの場面で「収入が途絶えるリスク」が会社員より大きくなります。

  1. 病気やケガで働けなくなったとき:会社員には傷病手当金(通算1年6か月、標準報酬日額のおおむね3分の2)がありますが、自営業にはこれに相当する公的な給付が原則ありません。働けない期間の生活費は、基本的に貯蓄や他の収入源でまかなう必要があります。
  2. 万一のことがあったとき:会社員は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金を受け取れる可能性がありますが、自営業は遺族基礎年金のみです。遺族厚生年金の分だけ、遺族の収入が少なくなりやすい構造です。

一方で、労災保険についても自営業は原則対象外ですが、建設業の一人親方など一部の業種では「特別加入制度」を使って任意で加入できる場合があります。該当する可能性がある方は、労働基準監督署や特別加入団体に確認するとよいでしょう。

民間保険を検討する際の考え方

ここまでの公的保障の違いを踏まえると、自営業の方が考えるべきポイントは主に次の2つです。

  • 働けない期間の生活費を、貯蓄でどれくらいまかなえるか。 生活費の半年〜1年分程度を目安に考える方が多いですが、家族構成や固定費によって必要な金額は変わります。貯蓄で足りない部分を、就業不能保障などで補うかどうかを検討する材料になります。
  • 万一のとき、遺族厚生年金がない分の生活費をどう埋めるか。 子どもの年齢や教育費、配偶者の収入状況によって必要性は大きく異なります。

老後の年金の土台が国民年金のみになる点については、iDeCo(個人型確定拠出年金)や国民年金基金など、自営業向けの上乗せ制度を活用する選択肢もあります。

なお、これらはあくまで「検討する際の視点」であり、特定の保険商品への加入を勧めるものではありません。保険料の金額は年齢・性別・健康状態・保障内容によって大きく変わるため、具体的な金額は見積もりで確認する必要があります。生命保険そのものの必要性を考える際の公的保障の整理は、生命保険は必要か?公的保障を先に確認でも解説していますので、あわせてご覧ください。

注意点・向いていない人

  • 十分な貯蓄があり、働けない期間や万一のときの生活費をまかなえる見込みがある方は、無理に民間保険を追加する必要はありません。
  • 会社員であっても、傷病手当金や遺族厚生年金だけで生活費のすべてがまかなえるとは限りません。住宅ローンや教育費など、家庭ごとの固定費によっては会社員でも保障の上乗せを検討する余地があります。
  • 独立してすぐは収入が不安定になりやすいため、保険料の負担が家計を圧迫しないか(掛け捨てか貯蓄性か、解約時に解約返戻金があるかなど)を確認したうえで判断することが大切です。

よくある質問

Q. 自営業でも傷病手当金のような給付を受けられませんか?
A. 加入している国民健康保険の運営元によっては、独自の給付制度を設けている国民健康保険組合(同業者団体が運営するもの)もあります。ご自身が加入している国民健康保険の窓口で確認するとよいでしょう。

Q. 自営業は年金が少ないと聞きますが、本当ですか?
A. 厚生年金の上乗せがない分、会社員と比べて老後に受け取れる年金額は少なくなる傾向にあります。iDeCoや国民年金基金など、自営業向けの上乗せ制度を活用して備える方法があります。

Q. 労災保険に自営業は絶対に入れないのですか?
A. 原則として労災保険の対象外ですが、建設業の一人親方など一部の業種では「特別加入制度」を使って任意で加入できる場合があります。対象になるかどうかは業種によって異なります。

Q. 会社員から自営業になったら、すぐに民間保険を見直すべきですか?
A. 一律には言えません。まずは公的保障がどう変わるか(傷病手当金や厚生年金がなくなる点)を確認し、そのうえで貯蓄や家族構成を踏まえて必要な備えを考えることをおすすめします。

ミナト先生のまとめ

自営業と会社員では、そもそも加入している公的な仕組みが違います。この違いを知らないまま「保険は不要」「保険は必須」と決めてしまうのは早計です。家計相談の場でも、独立をきっかけに公的保障の違いに初めて気づいたという方によくお会いします。まずはご自身がどちらの立場で、どんな公的保障があるのかを確認するところから始めてみてください。


この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。

保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。

制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省・全国健康保険協会・日本年金機構などの公式情報でご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました