保険を見直すタイミングがわからない方へ
「保険に入ってから何年も経つけれど、そのままにしている」「結婚や出産のたびに見直したほうがいいと聞くけれど、実際いつ動けばいいのかわからない」——このように感じたことはありませんか。
保険の見直しは、営業担当者に勧められたときにするものではありません。公的保障の範囲が変わるタイミング、つまり生活の状況が変わるタイミングで検討するのが、FPとして最もお伝えしたい考え方です。この記事では、見直しを検討する具体的なタイミングと、その際にまず確認すべき公的保障について解説します。
なお、この記事は特定の保険商品への加入を勧めるものではありません。保険の要否は世帯ごとの状況によって異なります。
結論:見直しどきは「公的保障が変わるとき」
先に結論からお伝えします。保険の見直しを検討したほうがよいのは、次のように公的保障や収入の前提が変わるタイミングです。
- 結婚したとき(扶養する家族ができる)
- 出産・妊娠したとき(加入できる保険に制限がかかる場合がある)
- 転職・独立したとき(会社員から自営業になると傷病手当金がなくなる)
- 住宅を購入したとき(団体信用生命保険で死亡保障の一部が重複する場合がある)
- 子どもが独立したとき、定年が近づいたとき(必要な死亡保障の額が変わってくる)
ここで大切なのは、「見直し=新しい保険に入る」ではないという点です。見直した結果、今の保障で足りている、あるいは減らせるという結論になることもあります。まずは公的保障を確認し、そのうえで判断するという順序が重要です。
まず確認したい公的保障
民間の保険を検討する前に、日本の公的保障がどこまでカバーしているかを押さえておく必要があります。以下は代表的な3つの制度です。
| 制度 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 高額療養費制度 | 医療費が高額になったとき | 1か月の医療費の自己負担に上限があり、超えた分は払い戻される |
| 傷病手当金 | 会社員・公務員が病気やケガで働けないとき | 標準報酬日額のおおむね3分の2が、通算1年6か月支給される |
| 遺族年金 | 一家の働き手が亡くなったとき | 子のある配偶者などに遺族基礎年金・遺族厚生年金が支給される |
高額療養費制度(出典:厚生労働省)は、1か月(月単位)の医療費の自己負担が所得区分ごとの上限を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。2026年7月診療分までは、年収約370〜770万円の区分(区分ウ)で「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」が上限でしたが、2026年8月診療分からは制度が改正され、区分ウの上限は「85,800円+1%」に引き上げられるとともに、年間の自己負担上限(区分ウで53万円)が新設される予定です。さらに2027年8月からは所得区分がより細かく分けられる方向で検討が進んでいます。制度の詳細や区分ウ以外の上限額は、厚生労働省の公表資料で最新の内容をご確認ください(詳しくは「高額療養費制度の改正点をFPが解説【2026年8月】」も参考にしてください)。
傷病手当金(出典:全国健康保険協会)は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった場合に、標準報酬日額のおおむね3分の2が、支給開始日から通算して1年6か月支給される制度です。ここで注意したいのは、国民健康保険(自営業者やフリーランスなど)には原則としてこの制度がないという点です。会社員から独立するタイミングは、この差を踏まえて見直しを検討する価値があります(制度の支給額や期間の詳細は「傷病手当金とは?支給額と期間をFPが解説【2026年7月】」で解説しています)。
遺族年金(出典:日本年金機構)は、厚生年金の加入者などが亡くなった場合に、子のある配偶者や子に遺族基礎年金が、また厚生年金の加入者であれば遺族厚生年金が支給される制度です。支給額は年度改定や報酬比例によって個別に異なるため、具体的な金額はご自身の年金記録をもとに日本年金機構の窓口や「ねんきんネット」で確認することをおすすめします。
公的保障だけで足りない部分はどこか
上記の公的保障は手厚い制度ですが、対象外の部分もあります。
- 高額療養費制度は保険診療が対象のため、差額ベッド代・先進医療の技術料・入院中の食費の一部は対象外です。
- 傷病手当金は会社員・公務員向けの制度であり、自営業やフリーランスには原則として同様の制度がありません。
- 遺族年金は生活費の一部を支える制度であり、住宅ローンの返済や子どもの教育費まで全額をまかなえるとは限りません(住宅ローンについては団体信用生命保険が別途カバーしている場合があります)。
この「公的保障で足りない部分」を、貯蓄でまかなえるか、民間保険でまかなうかを考えるのが、見直しの実務的な進め方です。「そもそも医療保険は必要なのか」という論点については「医療保険はいらない?公的保障との違い【2026年7月】」でも詳しく取り上げています。
民間保険を検討する際の考え方
ライフイベント別に、確認しておきたい観点を整理します。
- 結婚したとき:これまで自分ひとりの生活費で足りていた保障を、パートナーの生活費まで含めて考える必要が出てきます。ただし、共働きで双方に収入がある場合は、必要な保障額はそれほど大きくならないこともあります。
- 出産・妊娠したとき:健康状態によっては、妊娠中に加入できる医療保険が制限される場合があります。検討している場合は、時期を含めて早めに情報収集しておくと選択肢が狭まりにくくなります。
- 転職・独立したとき:会社員から自営業・フリーランスになると、傷病手当金がなくなり、厚生年金から国民年金に変わることで将来の年金額にも影響が出ます。就業不能時の備えを見直す一つのきっかけになります。
- 住宅を購入したとき:住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険は、契約者が死亡・高度障害になった場合にローン残債が保険金で弁済される仕組みです。これにより、既に加入している死亡保障と保障範囲が重複していないか確認する価値があります。
- 子どもが独立したとき・定年が近づいたとき:扶養する家族が減っていく局面では、必要な死亡保障の額も変わってきます。保険料の負担を見直す機会になります。
これらはあくまで一般的な考え方であり、実際に保険料を払い続けるべきか、減額・解約すべきかは、貯蓄額・住宅ローンの有無・扶養家族の人数などによって異なります。個別の商品の優劣についてはこの記事では判断せず、必要に応じて加入中の保険会社の窓口や、複数社を扱う相談窓口でご確認いただくことをおすすめします。
注意点・向いていない人
見直しにはいくつか注意しておきたい点があります。
- 健康状態によっては新規加入の条件が悪くなる場合があります。 今の保険を解約してから新しい保険に入り直そうとすると、告知内容によっては加入できない、または条件が付くことがあります。解約は新しい保険の加入が確定してからにするのが基本です。
- 掛け捨て型と解約返戻金型では、解約のタイミングによる損得の考え方が異なります。 解約返戻金型の保険を早期に解約すると、払い込んだ保険料より受け取る金額が少なくなる場合があります。
- 今のところ大きなライフイベントの予定がなく、保障内容にも不満がない場合は、無理に見直す必要はありません。 見直しは「変化があったとき」に検討するもので、定期的に保険を乗り換えること自体が目的ではありません。
なお、保険の相談窓口の多くは、相談者が保険に加入した際に保険会社から支払われる手数料によって運営が成り立っています。これは無料相談の一般的な仕組みであり、それ自体が悪いことではありませんが、複数の保険会社を比較したい方には有用な一方、その場で特定の商品を強く勧められた場合は、その場で即決せず、一度持ち帰って検討することをおすすめします。
よくある質問
Q. 保険の見直しは何年ごとにすればよいですか。
A. 決まった年数はありません。ライフイベントが起きたとき、または加入している保険の保障内容を最後に確認してから長期間経っている場合に検討するのが一般的な考え方です。
Q. 独身の間は保険は不要ですか。
A. 一律には言えません。扶養する家族がいない間は死亡保障の必要性が相対的に低くなる一方、就業不能時の生活費や医療費への備えは独身であっても検討の対象になります。
Q. 自営業・フリーランスは会社員より保険が必要ですか。
A. 傷病手当金のように会社員・公務員だけの制度もあるため、その部分の備えをどう考えるかは論点になります。ただし、必要性は貯蓄額や事業の状況によっても異なるため、一概には言えません。
Q. 今の保険を見直す際、誰に相談すればよいですか。
A. 加入中の保険会社の窓口のほか、複数の保険会社を扱う相談窓口という選択肢もあります。前述のとおり、相談窓口の多くは保険会社からの手数料で運営されている点を踏まえたうえで、複数の意見を比較する目的で利用するのも一つの方法です。
ミナト先生のまとめ
保険の見直しは、「なんとなく不安だから」ではなく、結婚・出産・転職・住宅購入・子どもの独立といった、公的保障や収入の前提が変わるタイミングで検討するのが実務的な進め方です。まず高額療養費制度・傷病手当金・遺族年金といった公的保障がどこまでカバーしているかを確認し、そのうえで足りない部分をどう埋めるかを考える——この順序を守るだけで、保険選びの判断はかなり整理しやすくなります。
家計相談の場でも、「なんとなく勧められたから」で加入した保険を見直すご相談は少なくありません。制度の内容を知ったうえで、ご自身の状況に照らして判断していただければと思います。
保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公式情報でご確認ください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。


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