「うちの家族に何かあったら、遺族年金だけで生活していけるのだろうか」——生命保険の加入や見直しを考えるとき、こうした不安を感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
遺族年金は、家計を支えていた方が亡くなったときに遺された家族の生活を支える公的な制度です。ただし「誰が」「いくら」受け取れるのかは、家族構成や亡くなった方の働き方によって大きく変わります。この記事では、遺族年金の仕組みと2026年度の年金額を、公的保障の順序に沿って整理します。
結論:まず公的保障の範囲を知ることが、保険を考える出発点になる
遺族年金には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。会社員・公務員の方は原則として両方を、自営業・フリーランスの方は遺族基礎年金のみを対象とする仕組みです。
つまり自営業の方は、会社員に比べて公的保障の厚みが薄くなりやすいという特徴があります。この違いを知らないまま「保険はいらない」「保険に入るべき」と判断してしまうと、実態とズレた見直しになりかねません。まずは公的保障でどこまでカバーされるのかを確認し、そのうえで足りない部分をどう埋めるかを考える、という順序が大切です。
遺族年金の仕組みと2026年度の年金額
遺族年金の全体像を表にまとめました。
| 項目 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 支給される人 | 国民年金の被保険者が死亡したとき、子のある配偶者または子 | 厚生年金の被保険者(会社員・公務員など)が死亡したとき、生計を維持されていた遺族 |
| 対象となる「子」の条件 | 18歳になった年度の3月31日までの子(障害がある場合は20歳未満)。子のない配偶者は対象外 | 妻・子・孫・55歳以上の夫や父母など、優先順位に沿って支給 |
| 2026年度(令和8年度)の年金額(本体) | 84万7,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は84万4,900円) | 亡くなった方の平均標準報酬額と厚生年金の加入期間に応じて個別に計算(報酬比例部分) |
| 子の加算額(2026年度) | 第1子・第2子:各24万3,800円/第3子以降:1人につき7万8,300円 | ― |
| 令和7年度からの改定率 | 国民年金(基礎年金)部分は+1.9%の増額改定 | 厚生年金(報酬比例)部分は+2.0%の増額改定 |
※上記の年金額は、日本年金機構「令和8年度の年金額改定について」の公表内容にもとづく2026年8月時点の情報です。年金額は毎年度改定されるため、正確な金額はご自身の年金加入記録も含めて日本年金機構の公式サイトまたは年金事務所でご確認ください。
たとえば配偶者と子ども2人の世帯であれば、遺族基礎年金は「84万7,300円+24万3,800円×2人分」で計算され、年間130万円台になる計算です。ここに、会社員・公務員だった方であれば遺族厚生年金(報酬比例部分)が上乗せされます。
遺族厚生年金は、亡くなった方の給与や加入期間によって金額が一人ひとり異なるため、この記事では具体的な金額を示しません。 ご自身の見込み額は、日本年金機構の「ねんきんネット」や年金事務所での試算でご確認いただくのが確実です。
公的保障で足りない部分はどこか
遺族年金だけで見えてくる課題を整理すると、次のような点が挙げられます。
- 自営業・フリーランスは遺族厚生年金がない。 会社員に比べて公的保障の上乗せ部分がなく、遺族基礎年金(国民年金部分)のみが頼りになります。
- 子のない配偶者は遺族基礎年金の対象外。 子どもが独立した後や、そもそも子どものいない世帯では、公的保障の柱の一つが使えません(別途「寡婦年金」「死亡一時金」などの制度がありますが、要件が異なります)。
- 住居費・教育費など生活の固定費は年金額と別に発生する。 遺族年金は生活費の一部をまかなう位置づけであり、住宅ローン(団体信用生命保険が付いていない場合)や子どもの教育費まで含めてすべてを賄えるとは限りません。
- 年金額は改定される。 2026年度は増額改定でしたが、将来にわたって同じ水準が続くとは限りません。
民間保険を検討する際の考え方
ここまでの内容を踏まえると、生命保険を検討する際の考え方は次のように整理できます。
- まず遺族年金の見込み額を確認する。 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、自分が亡くなった場合に遺族厚生年金がどの程度になりそうか、目安を確認します。
- 月々の生活費・教育費・住宅費用と比較する。 遺族年金で賄える範囲と、実際に必要な支出との差額が、民間保険で備えるべき目安の一つになります。
- 保険期間を家族のライフステージに合わせる。 子どもが独立するまでの期間だけ手厚くする「収入保障保険」など、必要な期間に絞った備え方も選択肢になります。
保険料の具体的な金額は、年齢・性別・健康状態・保障内容によって大きく変わるため、この記事では扱いません。 気になる保障プランがあれば、複数社の見積もりを比較したうえで検討することをおすすめします。
注意点・向いていない人
- 子どものいない共働き世帯や、貯蓄・資産形成がすでに進んでいる世帯では、大きな死亡保障を追加する必要性は相対的に低くなる場合があります。
- 逆に、自営業で子どもが小さい世帯は、公的保障の上乗せがない分、必要保障額が大きくなりやすい傾向があります。
- 「保険に入っておけば安心」という理由だけで加入すると、必要以上の保険料を払い続けることにもなりかねません。必要保障額は家族構成や資産状況によって変わるため、一律の正解はありません。
よくある質問
Q1. 遺族年金は自動的に振り込まれますか?
いいえ、請求手続きが必要です。年金事務所または街角の年金相談センターで、必要書類をそろえて請求します。
Q2. 子どもが成人したら遺族年金はなくなりますか?
遺族基礎年金は、子が18歳になった年度末(または20歳未満の障害がある子)を過ぎると支給が終了します。遺族厚生年金は要件を満たせば継続する場合がありますが、個別の状況によって異なります。
Q3. 内縁関係でも遺族年金は受け取れますか?
生計維持関係が認められれば、事実婚(内縁関係)でも対象になる場合があります。個別の判断が必要なため、年金事務所にご確認ください。
Q4. 遺族年金と生命保険、どちらを優先すべきですか?
優先順位というより、遺族年金を土台にして、不足する部分を生命保険で補う、という組み合わせで考えるのがFPとしての基本的な整理です。
ミナト先生のまとめ
家計のご相談を受けていると、「遺族年金がどのくらいもらえるか知らないまま、なんとなく生命保険に加入している」という方によく出会います。公的保障の中身を知ることは、保険が「多すぎる」のか「足りない」のかを判断する土台になります。
まずはご自身の年金記録を確認し、遺族厚生年金の見込み額を把握するところから始めてみてください。そのうえで、生活費や教育費との差額を考えることが、民間保険を検討する際の現実的な出発点になります。
保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
制度は改正される場合があります。最新の内容は日本年金機構・厚生労働省などの公式情報でご確認ください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。
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