「保険料の負担が重いので解約したい」「入ったままにしている保険が本当に必要なのか分からない」。家計のご相談では、こうした声をよく伺います。ただ、保険の解約は、やり方や順番によっては、あとから「入り直せない」「返ってくるお金が思ったより少ない」という状況になることがあります。この記事では、公的保障の内容を先に整理したうえで、解約を考えるときのタイミングと注意点を解説します。
結論:解約は「新しい保障が決まってから」「公的保障と貯蓄で足りると確認してから」
結論からお伝えすると、保険の解約は「いつ解約するか」よりも、「解約したあとの保障で困らないか」を先に確認することが大切です。解約は一度手続きをすると基本的に取り消せません。次の3点を確認してから判断すると、後悔が少なくなります。
- 公的保障と貯蓄で、解約後の不足分をまかなえるか
- 健康状態が変わっていて、解約後に同じ条件で入り直せない可能性はないか
- 解約返戻金(解約したときに戻るお金)の有無と、払込保険料との関係はどうなっているか
なお、この記事は特定の保険商品をおすすめするものではなく、「解約すべき」「続けるべき」を断定するものでもありません。判断材料を整理したものです。
まず確認:公的保障はどこまで守ってくれるか
民間保険の解約を考えるときは、先に公的保障の範囲を知っておくことが、FPとして最初にお伝えしたい順序です。主な公的保障は次のとおりです(2026年9月時点)。
| 制度 | 対象 | 内容の要点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 高額療養費制度 | 医療費の自己負担が高額になったとき | 1か月(月単位)の自己負担に所得区分ごとの上限がある。区分ウ(年収約370〜770万円)の場合、2026年7月診療分までは「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」。2026年8月診療分から上限が引き上げられ、「85,800円+1%」の考え方になり、年間上限(区分ウで53万円)も新設されている。直近12か月に3回以上該当した場合の4回目以降(多数回該当)は44,400円で据え置き。2027年8月にはさらに区分の細分化と上限の見直しが予定されている | 厚生労働省 |
| 傷病手当金 | 健康保険の被保険者が、業務外の病気・ケガで働けなくなったとき | おおむね標準報酬日額の3分の2を、支給開始日から通算して1年6か月まで。国民健康保険(自営業者など)には原則としてこの制度がない | 全国健康保険協会 |
| 遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金) | 加入者が亡くなったとき、残された家族 | 子のある配偶者や子には遺族基礎年金、厚生年金の加入者の遺族には報酬比例の遺族厚生年金が支給される。金額は世帯構成や加入状況で個別に異なるため、日本年金機構の最新の公表で確認する | 日本年金機構 |
※高額療養費制度の計算式の「総医療費」は、窓口で払う額ではなく、保険診療の総額(10割分)です。また月単位で判定されるため、入院が月をまたぐと自己負担が増える場合があります。制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公式情報でご確認ください。
各制度の詳しい解説は、次の記事もご覧ください。
公的保障で足りない部分はどこか
公的保障は手厚い一方で、次のような部分はカバーされません。解約を考える前に、この「足りない部分」を貯蓄でまかなえるかを確認します。
- 差額ベッド代や先進医療など、公的医療保険の対象外の費用
- 傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)を超えて働けない場合の生活費
- 自営業・フリーランスなど、傷病手当金の対象にならない働き方での収入減
- 働き手が亡くなったあとの、教育費や生活費のうち遺族年金で足りない分
この不足分を「貯蓄で十分にまかなえる」と考えられるなら、解約を検討する余地があります。逆に「貯蓄だけでは心もとない」なら、解約ではなく保障内容の見直し(減額など)を検討する、という選択肢もあります。
解約を考えるタイミングの目安
解約を検討しやすいタイミングは、次のような場面です。ただし、いずれも「解約すべき」という意味ではなく、「保障の必要性を点検する機会」という意味です。
契約の更新時期・保険料の見直し時期
更新型の保険は、更新のたびに保険料の条件が変わる仕組みです。更新のお知らせが届いたときは、今の保障が必要か点検しやすい機会です。
ライフイベントで必要な保障が変わったとき
子どもの独立、住宅ローンの完済、退職、転職や独立などで、必要な保障は変わります。会社員から自営業に変わると傷病手当金がなくなるなど、公的保障の内容も変わる点に注意が必要です。
保険料の負担が家計を圧迫しているとき
家計に占める保険料の負担感が大きいときは、解約だけでなく、減額・払済保険への変更など、負担を下げる別の方法もあわせて検討します。
同じ保障の契約が重複しているとき
医療保障が複数の契約に含まれているなど、内容が重なっている場合は、整理できる余地があります。
解約する前に知っておきたい注意点
1. 解約すると「入り直せない」ことがある
保険は健康状態などの告知を経て契約します。解約後に病気やケガがあると、同じ条件で入り直せない、あるいは条件が厳しくなることがあります。年齢が上がると、同じ保障でも保険料の条件が変わる点も知っておきましょう。
2. 新しい保険に入り直す場合は「新しい契約が成立してから」解約する
乗り換えの場合、先に解約すると、新しい契約が成立するまでに保障の空白ができるおそれがあります。新しい契約の保障がいつ始まるかを確認したうえで、元の契約を解約する順序が安全です。
3. 解約返戻金は「必ず戻る」わけではない
貯蓄型の保険は解約返戻金がありますが、加入から日が浅いうちに解約すると、払い込んだ保険料の合計を下回る(元本割れする)場合があります。掛け捨て型はほとんど戻らないことが一般的です。返戻金の金額は、保険会社に確認できる「解約返戻金のお知らせ」で確認します。
4. 解約返戻金に税金がかかる場合がある
受け取る解約返戻金が払い込んだ保険料を上回る場合、所得税の課税対象になることがあります。詳しくは国税庁の公式情報や税理士などの専門家にご確認ください。
5. 解約以外の選択肢もある
保険料の払込みをやめて保障を小さく続ける「払済保険」、保障額を下げる「減額」、解約返戻金を担保にお金を借りる「契約者貸付」など、解約以外の方法があります。いずれも条件や不利な点があるため、保険会社の説明を確認してから選びます。
この記事の内容が向いていない人・注意したい人
- すでに健康上の不安がある人:解約すると入り直せない可能性が高くなります。解約の前に、保険会社や専門家へ相談することをおすすめします。
- 貯蓄が少なく、公的保障だけでは不安が大きい人:解約よりも、減額など保障を残したままの見直しが合う場合があります。
- 保障内容をよく把握していない人:まず保険証券で、何が保障されているかを確認するところから始めます。
保険の相談窓口を使うときは、その仕組みも知っておくと安心です。多くの無料相談サービスは、相談者が保険に加入した際に保険会社から支払われる手数料で成り立っています。複数の保険を比較したい人には有用ですが、その場で特定の商品を強く勧められても、即決せずに一度持ち帰って検討することをおすすめします。詳しい仕組みは次の記事で解説しています。
よくある質問
Q1. 保険を解約するのに最適な時期はありますか?
決まった時期はありません。更新時期やライフイベントの節目は、必要な保障を点検しやすい機会ですが、「解約後の保障に不足がないか」を確認できていることが前提です。
Q2. 解約すると、払った保険料は戻ってきますか?
保険の種類と加入期間によります。貯蓄型は解約返戻金がありますが、加入期間が短いと払込保険料を下回ることがあります。掛け捨て型はほとんど戻らないのが一般的です。
Q3. 新しい保険に乗り換えたいときは、先に解約してもいいですか?
先に解約すると保障の空白ができるおそれがあります。新しい契約が成立し、保障が始まったことを確認してから、元の契約を解約する順序が安全です。
Q4. 解約以外の方法はありますか?
払済保険への変更、保障額の減額、契約者貸付などがあります。それぞれ条件や注意点があるため、保険会社の説明を確認してください。
Q5. 自営業の場合、解約は慎重に考えたほうがいいですか?
自営業の方が加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません。働けなくなったときの収入減を、貯蓄や民間保険でどう備えるかを、あらかじめ確認してから判断することが大切です。
ミナト先生のまとめ
保険の解約で大切なのは、タイミングそのものより「解約したあとに困らないか」を先に確認することです。一般論ですが、家計の見直しの場では、保険料を下げたい気持ちが先に立ち、公的保障や貯蓄の状況を整理する前に解約を考えてしまうケースが少なくありません。まず公的保障で守られる範囲を知り、そのうえで足りない部分を貯蓄でまかなえるか、民間保険で備えるかを考える。この順序をお守りいただくと、判断がぶれにくくなります。解約や乗り換えは、新しい保障が決まってから、保険証券と解約返戻金の額を確認して進めてください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の”損しない”見直しを発信しています。
保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公式情報でご確認ください。


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