「電気代を安くしたいから、電力会社を乗り換えようかな」——そう考えたことがある方は多いのではないでしょうか。電力の小売全面自由化から数年が経ち、大手電力会社以外にも数多くの新電力が選べるようになりました。
ただし、乗り換えれば必ず安くなるとは限りません。実際に、市場価格の変動や事業撤退といった理由で、切り替え後に後悔したという声も聞かれます。この記事では、電力会社を乗り換える際に知っておきたいデメリットと注意点を、FPの視点から整理します。
結論:乗り換え自体は選択肢のひとつ。ただしリスクの理解が前提
電力会社の乗り換えは、電気料金を見直す方法のひとつではあります。一方で、プランの内容によっては料金が変動しやすくなったり、契約期間中の解約に費用がかかったりすることがあります。「乗り換え=節約」と単純に考えず、メリットとデメリットの両方を確認したうえで判断することが大切です。
電気料金の内訳を理解しておく
乗り換えのメリット・デメリットを判断するには、まず電気料金がどのように構成されているかを知っておくと理解しやすくなります。電気料金は、主に次の4つの要素で構成されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本料金(アンペア料金) | 契約容量などに応じて毎月固定でかかる部分 |
| 従量料金 | 実際に使った電力量(kWh)に応じてかかる部分 |
| 燃料費調整額 | 火力発電に使う燃料費の変動を反映し、毎月増減する部分 |
| 再エネ賦課金 | 再生可能エネルギーの普及費用を、電気を使うすべての世帯で負担する部分 |
このうち再エネ賦課金は、経済産業省が毎年度単価を決定しています。2026年度(2026年5月検針分〜2027年4月検針分)の単価は1kWhあたり4.18円で、前年度(2025年度)の3.98円から引き上げられています(経済産業省発表、2026年3月19日公表)。仮に月300kWh使用した場合、再エネ賦課金だけで月1,254円程度になる計算です(使用量300kWhの場合の目安)。
乗り換えで見直せるのは主に「基本料金」と「従量料金」の部分で、燃料費調整額や再エネ賦課金はどの電力会社と契約していても、基本的な仕組みは共通してかかってきます。
乗り換えで生じやすいデメリット・注意点
電力会社の切り替えを検討する際は、次のような点に注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 市場連動型プランのリスク | 卸電力市場の価格に連動して単価が変わるプランは、市場価格が高騰した際に電気代が大きく跳ね上がることがあります |
| 解約金・違約金 | 契約期間中に解約すると、数千円程度の違約金が設定されているプランがあります |
| セット割の条件 | ガスや通信サービスとのセット契約が前提の割引は、片方だけ解約すると割引が外れることがあります |
| 新電力の事業撤退 | 契約先が事業から撤退するケースがあります。その場合も電気の供給が止まるわけではなく、契約終了の案内を受けたうえで、次の契約先(多くは大手電力会社の規定プラン)を自分で選ぶ流れになります |
| 集合住宅特有の制限 | マンションなどで高圧一括受電を導入している物件では、住戸ごとに電力会社を自由に選べない場合があります |
市場連動型プランは仕組みを理解してから選ぶ
市場連動型プランは、卸電力価格が下がっている時期は電気代を抑えられる可能性がある一方、天候不順や燃料価格の高騰などで市場価格が急上昇すると、電気代が想定より大幅に高くなることがあります。過去には、こうしたプランで想定外の高額請求が発生した事例も報告されています。仕組みをよく理解せずに契約すると、家計への影響が読みにくくなる点は押さえておく必要があります。
新電力が撤退しても、いきなり電気が止まるわけではない
新電力の中には、卸電力価格の高騰や採算悪化を理由に事業から撤退する会社もあります。もっとも、契約先が撤退した場合でも、通知なく電気の供給が止まることは基本的にありません。契約終了の案内が届いたあと、利用者自身が次の契約先を選ぶことになり、選ばなかった場合は大手電力会社の標準的な料金プランに移行するのが一般的な流れです。新電力への切り替えを検討する際は、こうした撤退時の対応も含めて確認しておくと安心です。
乗り換えを検討するときの確認手順
- 現在の検針票(電気ご使用量のお知らせ)で、基本料金・従量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の内訳を確認する
- 検討しているプランが「市場連動型」かどうかを確認する
- 契約期間の縛りと、解約金の有無・金額を確認する
- セット割がある場合、単体解約時の条件を確認する
- 集合住宅の場合、高圧一括受電の対象になっていないかを確認する
こんな方は慎重に検討したい
- 毎月の電気代の変動を避けたい方(市場連動型プランは避けたほうが安心です)
- 短期間での引っ越しや契約変更を予定している方(違約金が発生する可能性があります)
- お住まいが高圧一括受電のマンション・アパートの方(そもそも個別に電力会社を選べない場合があります)
一方で、電気の使用量や契約アンペアを見直すだけでも、料金を抑えられる場合があります。乗り換え以外の見直し方法については、電気代が高い原因と見直し方や契約アンペアの見直し方と注意点もあわせてご確認ください。
通信費や家計のご相談を受けていると、電気の乗り換えについても話題になることがあります。そうした中で感じるのは、キャンペーンの割引額など「お得に見える部分」だけに注目してしまい、解約条件や料金プランの仕組みまで確認しないまま契約してしまう方が少なくないということです。乗り換えを検討する際は、割引額と同じくらい、契約条件の確認に時間をかけることをおすすめします。
よくある質問
Q. 電力会社を乗り換えると必ず安くなりますか?
必ず安くなるとは限りません。基本料金や従量単価は会社によって異なりますが、燃料費調整額や再エネ賦課金の仕組みは共通しているため、ライフスタイルや使用量によっては、乗り換えても差が小さい場合や、プラン次第では高くなる場合もあります。
Q. 市場連動型プランとは何ですか?
卸電力取引市場の価格に応じて、電気料金の単価が変動するプランです。市場価格が安い時期は電気代を抑えられる可能性がありますが、価格が高騰する時期には料金が大きく上がることがあります。
Q. 乗り換え先の新電力が倒産・撤退したらどうなりますか?
契約終了の案内が届いたうえで、利用者自身が次の契約先を選ぶ流れになります。選ばなかった場合は、大手電力会社の標準的な料金プランに移行するのが一般的です。通知なく電気が止まるわけではありません。
Q. 解約金がかかるのはどんなケースですか?
契約期間の縛りがあるプランで、期間内に解約した場合に発生することがあります。金額や条件は会社・プランによって異なるため、契約前に確認しておくことが大切です。
Q. マンション・アパートでも自由に電力会社を選べますか?
多くの場合は選べますが、建物全体で高圧一括受電を導入している物件では、住戸ごとに電力会社を選べないことがあります。乗り換えを検討する前に、管理会社や大家さんに確認しておくと安心です。
ミナト先生のまとめ
電力会社の乗り換えは、電気代を見直す選択肢のひとつです。ただし「乗り換えれば必ず安くなる」というものではなく、市場連動型プランのリスクや解約金、セット割の条件など、確認しておきたいポイントがいくつかあります。まずは検針票で料金の内訳を確認し、プランの仕組みを理解したうえで、ご自身の使用状況に合った選択をしていただければと思います。
なお、本記事の再エネ賦課金の単価は2026年8月時点の情報です。最新の単価・支援策は各社および経済産業省の公式情報でご確認ください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。


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