「自営業と会社員では、もしものときの公的保障にどのくらい差があるのだろう」。家計相談では、独立や転職のタイミングでこうしたご質問をよくいただきます。ミナト先生です。この記事では、制度の出典を示しながら、違いを整理していきます。
結論:差が出やすいのは「働けなくなったとき」と「亡くなったとき」です
医療費の自己負担を抑える高額療養費制度は、会社員も自営業者も対象です。一方で、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金は、会社員などの健康保険には用意されていますが、国民健康保険(自営業者など)には原則としてありません。亡くなったときの遺族年金も、加入していた年金制度によって手厚さが変わります。
この差があるため、民間保険を検討する際は「公的保障で何が受けられて、何が受けられないのか」を先に確認することが大切です。なお、どちらが得か・損かを断定するものではありません。
公的保障の違いを表で整理します
| 項目 | 会社員(健康保険・厚生年金) | 自営業者(国民健康保険・国民年金) |
|---|---|---|
| 医療費の自己負担上限(高額療養費) | 対象 | 対象 |
| 病気・ケガで働けないときの傷病手当金 | 対象。おおむね標準報酬日額の3分の2、支給開始日から通算1年6か月 | 原則としてなし |
| 亡くなったときの遺族年金 | 遺族基礎年金に加え、遺族厚生年金の対象となる場合がある | 遺族基礎年金(子のある配偶者、または子が対象)が中心 |
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」、日本年金機構「遺族年金」、厚生労働省「高額療養費制度」(いずれも2026年10月時点で確認)。
1. 医療費:高額療養費制度は共通です
高額療養費制度は、1か月(月単位)の医療費の自己負担が所得区分ごとの上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。会社員の健康保険でも、自営業者の国民健康保険でも利用できます。
厚生労働省の公表によると、2026年8月診療分から月額の上限が引き上げられました。たとえば年収約370〜770万円の区分では、上限は「85,800円+(総医療費−上限の基準額)×1%」となり、あわせて年間上限も新設されています。なお2026年7月診療分までは「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」でした。2027年8月には所得区分の細分化など第2段階の見直しも予定されています。
注意点として、計算に使う「医療費」は窓口で払った金額ではなく、保険診療の総医療費(10割分)です。また月単位で判定されるため、入院が月をまたぐと負担が増える場合があります。差額ベッド代や先進医療の技術料などは、この制度の対象外です。詳しくは高額療養費制度の改正の解説記事をご覧ください。
2. 働けなくなったとき:傷病手当金の有無が大きな分かれ目です
全国健康保険協会によると、傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった場合に支給され、おおむね標準報酬日額の3分の2が、支給開始日から通算して1年6か月支給されます。
国民健康保険には、原則としてこの仕組みがありません。そのため自営業者は、仕事を休んだ期間の収入減を、ご自身の貯蓄や事業の資金繰りでまかなう前提になりやすい点が、会社員との大きな違いです。傷病手当金の詳細は傷病手当金の解説記事で説明しています。
3. 亡くなったとき:加入している年金制度で変わります
日本年金機構によると、遺族基礎年金は、子のある配偶者または子が対象です。会社員など厚生年金の加入者が亡くなった場合には、これに加えて遺族厚生年金が支給される場合があります。遺族厚生年金は報酬比例で金額が個別に異なるため、ここでは具体的な金額は挙げません。遺族基礎年金の金額も毎年度改定されますので、日本年金機構の最新の公表でご確認ください。
お子さんがいない世帯では、遺族基礎年金の対象にならないケースもあります。自営業者の場合、公的保障の枠組みが遺族基礎年金中心になりやすく、残された家族の生活費をどう備えるかは、世帯ごとに考える必要があります。詳しくは遺族年金の仕組みの解説記事も参考にしてください。
公的保障で足りない部分はどこか
自営業者の場合、特に確認したいのは次の点です。
- 働けない期間の生活費と事業の固定費(傷病手当金がないため)
- 亡くなった場合に、遺族基礎年金だけで家族の生活費がまかなえるか
- 差額ベッド代、先進医療など、高額療養費の対象外の費用
会社員の方も、傷病手当金には期間の上限(通算1年6か月)があり、受給額は給与そのままではありません。長期の療養になった場合の備えは、どちらの立場でも検討の余地があります。
民間保険を検討する際の考え方
ミナト先生の家計相談の経験からお伝えすると、保険の議論は「入る・入らない」から始めるより、「公的保障で足りない金額を、貯蓄でまかなえるか」から始めるほうが整理しやすいと感じています(あくまで一般論です)。貯蓄で対応できる部分は貯蓄で、貯蓄では心もとない部分を、必要に応じて民間保険や共済などで補うという順序です。
当サイトは保険募集人ではないため、特定の保険商品の推奨や加入の勧誘は行いません。保険料は年齢・性別・健康状態・保障内容によって大きく変わりますので、検討される場合は複数の見積もりで確認してください。
注意点・向いていない人
- この記事は公的保障の一般的な枠組みの説明です。個別の受給可否や金額は、加入先の窓口でご確認ください。
- 会社員でも、勤務先の健康保険の種類や働き方(短時間勤務など)によって加入状況が異なる場合があります。
- 自営業の方でも、国民健康保険組合など、制度が異なる場合があります。
- 家族構成や貯蓄額によって必要な備えは大きく変わるため、この記事だけで保険の要否を判断することはおすすめしません。
よくある質問
Q1. 自営業は医療費の自己負担が大きくなりますか?
窓口負担の割合や高額療養費制度は、会社員と同様に利用できます。差が出やすいのは、仕事を休んだ間の収入面です。
Q2. 会社員なら傷病手当金だけで十分ですか?
傷病手当金はおおむね標準報酬日額の3分の2で、期間も通算1年6か月までです。生活費の水準や貯蓄によって、足りるかどうかは世帯ごとに異なります。
Q3. 自営業から会社員になると、保障はどう変わりますか?
健康保険と厚生年金に加入するため、傷病手当金や遺族厚生年金の対象になる場合があります。具体的な条件は、勤務先や年金事務所にご確認ください。
Q4. 共済と保険は、どちらを選べばよいですか?
優劣を一概に断定することはできません。保障内容と条件を比較し、必要な保障額に照らして検討することをおすすめします。
ミナト先生のまとめ
自営業者と会社員の公的保障は、医療費の自己負担を抑える高額療養費制度は共通ですが、傷病手当金の有無や遺族年金の厚みに違いがあります。まず公的保障で何が受けられるかを確認し、そのうえで不足分を貯蓄や民間保険などでどう備えるかを考える流れが、無理のない整理の仕方です。
制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公式情報でご確認ください。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の”損しない”見直しを発信しています。
保険の必要性は世帯ごとに異なります。加入・見直しの判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。


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