新電力から乗り換えの提案を受けたけれど、以前ニュースで見た「新電力の撤退」が気になって二の足を踏んでいる——そう感じている方は少なくないと思います。実際に契約していた電力会社が事業を続けられなくなったら、電気は本当に止まってしまうのでしょうか。この記事では、新電力が撤退・倒産した場合に何が起きるのか、仕組みと契約者が実際にすべき対応を、2026年8月時点の情報にもとづいて整理します。
結論からお伝えすると、契約している新電力が撤退・倒産しても、電気が突然止まることはありません。「最終保障供給」という制度によって、地域の電力会社(一般送配電事業者)が一時的に電気を供給する仕組みが用意されているためです。ただし、この仕組みはあくまで一時的な措置であり、料金は通常より高くなる傾向があります。撤退の連絡を受けたら、早めに新しい契約先を探す必要がある点は押さえておきましょう。
新電力とは?電力小売の自由化からおさらい
2016年の電力小売全面自由化により、大手電力会社(東京電力や関西電力など)以外の企業も家庭向けに電気を販売できるようになりました。こうした新規参入の電力会社は「新電力(PPS)」と呼ばれています。電気を送る送電線や配電設備は、これまでどおり地域の電力会社(一般送配電事業者)が管理しており、新電力はその送配電網を借りて電気を届ける仕組みです。この関係を理解しておくと、新電力が事業から撤退した場合に何が起きるかもイメージしやすくなります。
新電力が撤退・倒産したら電気はどうなるか
新電力各社は、燃料価格や電力の卸市場価格の変動、資金繰りの悪化などを理由に、事業からの撤退や倒産に至るケースがこれまでにも実際にありました。契約先の新電力が撤退すると、その会社との電気の契約は終了しますが、電気の供給自体が即座に止まるわけではありません。
一般送配電事業者には、契約先を失った利用者に対して電気の供給を続ける「最終保障供給」を行う義務が定められています。この仕組みがあるため、契約していた新電力が事業を停止しても、その日から電気が使えなくなるという事態は避けられるようになっています。
「最終保障供給」という仕組み(電力契約のセーフティネット)
最終保障供給とは、契約する電力会社を失った利用者が無契約の状態になっても、電気の供給が止まらないようにする制度です。地域の一般送配電事業者が、一時的に電気を供給します。
経済産業省(資源エネルギー庁)の資料によると、この最終保障供給の料金は、大手電力会社の標準的な料金メニューよりおおむね2割程度高い水準に設定されています(2026年8月時点)。あくまで一時的なセーフティネットという位置づけで、利用者が長期にわたって頼り続けることを想定した制度ではありません。
| 項目 | 通常の電力契約 | 最終保障供給 |
|---|---|---|
| 供給元 | 契約した新電力・大手電力 | 地域の一般送配電事業者 |
| 料金水準 | 各社のプランによって異なる | 大手電力の標準メニューよりおおむね2割程度高い(2026年8月時点) |
| 利用期間 | 契約が続く限り | 一時的な措置という位置づけ |
| 適用のされ方 | 利用者が契約先を選ぶ | 契約先がない状態になると適用される仕組み |
※最終保障供給の料金水準や制度の詳細は見直される場合があります。最新の内容は経済産業省・資源エネルギー庁の公式情報でご確認ください。
撤退の連絡が来たら実際にすべきこと
- 通知の内容を確認する(供給終了日、最終保障供給への移行の有無)
- 新しい電力会社を比較検討する(もとの大手電力の従量電灯プランに戻る、または他の新電力に切り替える)
- 切り替えの手続きを行う(インターネットで申し込みが完結し、工事が不要なケースが多い傾向にあります)
- 最終保障供給が適用されている間に手続きを終えられるよう、余裕を持って動く
手続き自体は多くの場合オンラインで完結し、電気メーターの立会いなどの工事は基本的に不要とされています。ただし申し込みから供給開始までは一定の日数がかかることがあるため、通知を受け取ったら早めに動き始めることをおすすめします。
電気料金の内訳もあわせて確認しておきたい
電気料金は、基本料金(またはアンペア料金)、使用量に応じた従量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金を合計した金額になっています。新電力への切り替えを検討する際は、料金プランの安さだけでなく、この内訳のどこが変わるのかを確認すると判断しやすくなります。内訳の仕組みは電気代が高い原因と見直し方【2026年8月】で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
再エネ賦課金は毎年度単価が見直される項目で、2026年度は1kWhあたり4.18円です(経済産業省が2026年3月19日に公表、2026年5月検針分から適用)。この項目については再エネ賦課金とは?仕組みと2026年度単価【2026年8月】でも解説しています。
契約アンペアの見直しなど、切り替え以外の節約方法については契約アンペアの見直しで電気代節約【2026年7月】もあわせてご覧ください。
新電力への切り替えで気をつけたい注意点
「乗り換えれば電気代が安くなる」とは限りません。特に次の点には注意が必要です。
- 市場連動型プラン:卸電力市場の価格に連動して料金が変わるプランは、市場価格が急騰した場合に想定より高い請求になることがあります。
- 解約金の有無:契約期間の定めがあるプランでは、期間内に解約すると違約金が発生する場合があります。
- セット割の条件:ガスや通信とのセット割は、オプションの加入や利用期間の条件がついていることが多く、条件を満たさないと想定した割引を受けられないことがあります。
- 事業継続のリスク:撤退・倒産の事例が過去にあったことを踏まえると、料金の安さだけでなく、事業の継続性や情報開示の状況も確認しておくと安心です。
これらの条件は契約前によく確認し、メリットとリスクの両方を踏まえて検討することをおすすめします。
こんな方は慎重な検討が向いています
- 電気代の内訳(基本料金・従量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金)をまだ把握できていない方
- 市場連動型プランの仕組みやリスクを理解しないまま契約を検討している方
- 契約期間や解約金の条件を確認せずに切り替えを決めようとしている方
反対に、契約内容を理解したうえで比較検討したい方には、複数のプランを見比べる価値があると言えます。
よくある質問
Q. 新電力が倒産したら、それまで払った料金や保証金はどうなりますか?
A. 契約先の清算手続きの状況によって対応が異なります。未払い分の扱いや預けていた保証金の返還については、その会社の清算手続きや消費生活センターへの確認が必要になる場合があります。
Q. 最終保障供給の間に新しい電力会社を探さないとどうなりますか?
A. 最終保障供給は一時的な措置という位置づけです。そのままにしておくと標準メニューより高い料金を払い続けることになるため、早めに契約先を決めることをおすすめします。
Q. もとの大手電力会社に契約を戻すことはできますか?
A. 可能です。新電力への切り替え前に契約していた大手電力会社の従量電灯プランなどに戻すことができます。
Q. 撤退リスクの少ない新電力をどう見分ければいいですか?
A. 決算情報の開示状況や事業年数、料金プランの内容(市場連動型かどうか)などを確認する方法があります。ただし将来の事業継続を確実に予測することはできないため、複数の情報源で確認したうえで判断することが大切です。
ミナト先生のまとめ
FPとして家計のご相談を受ける中で、新電力の撤退のニュースを見て「自分の契約している会社は大丈夫だろうか」と不安になったというお声を伺うことがあります。実際のところ、最終保障供給という仕組みがあるため、契約先が撤退してもその日から電気が使えなくなるわけではありません。とはいえ、最終保障供給はあくまで一時的な措置で料金も高くなる傾向があるため、通知を受けたら早めに新しい契約先を検討することが大切です。新電力への切り替え自体は、料金プランやセット割の条件次第でメリットがある一方、市場連動型プランや解約金といった注意点もあります。仕組みとリスクの両方を理解したうえで、ご自身の使用状況に合った選択をしていただければと思います。
この記事を書いた人:ミナト先生/FP2級・元携帯キャリア営業(約1万契約)。通信費と家計の"損しない"見直しを発信しています。
※本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづいています。最新の単価・支援策は各社および経済産業省の公式情報でご確認ください。


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